警察沙汰の話2
扉の向こうにいたのはおそらく隣人の男だった。
このマンションに住んで3年。
何度か顔を合わせている。
おそらくあれは隣人の男だ。
民度の低そうな赤いニット帽、白い肌に175cmくらいの細長い体型。
うん、間違いなく隣人の銀のさらのバイトをしている男だ。
ひとまずベッドへ戻り寝てみる。
が、もちろん眠りに落ちようとしたのではない。
さすがにこの状況では寝られない。
警察へ110するべきか。
いや、でも被害はないし110して良いものか。
そこで思い出した。
リチャードのパパは警察官であることを。
ひとまず父へ連絡した。
「もしもし、リチャードだけど。久しぶり♪今怖いことがあって、こういう状況なんだけどこれって110していいの?したら何してくれるの?隣の人、わたしの家の鍵持ってるっぽい」
すると父はもちろん110して良いとのこと。
しかし警察が来ても事情聴取をするのみで特にしてくれることはないみたいだ。
わたし「じゃあいいや、連絡しなくて。あ、でもマンションのエレベーターに監視カメラついてるんだけど、管理会社が提供してくれたらそれ調べくれたりする?あとドアに指紋残ってると思うけど、照合してくれたりするの?」
父「してくれるかもしれない。リチャードが連絡しないならお父さん連絡するよ。」
わたし「ほんと?ありがとう。緊張するから連絡してほしい」
こんな会話をして10分後くらいにまたお父さんから連絡が来て、今からすぐ警察が来るとのこと。
その間わたしはまず管理会社に連絡して事情を話し、もし必要があればエレベーターの監視カメラの情報を提供してくれることを約束した。
そしてジェラートピケのショーパンとモコモコのパーカーを着ていたが、ショーパンは刺激的過ぎるかもしれないと思いスウェットに履き替えて、準備万端で警察官を待っていた。
それからすぐチャイムが鳴った。
ちゃんと顔が写って、これが通常の部外者の浸入経路だと改めて実感した。
先ほどの玄関前で鳴らされるチャイムはやはりマンション内の人間、、隣人の顔が浮かぶ。
警察官が玄関を開けて玄関に入り、玄関先で事情聴取が始まった。
警察官は肌つやがよく、おそらく警察学校を出てすぐの22歳くらいであろうことが想像できた。
警察官「じゃあ少し聞いてるけど詳しく状況聞かせてくれる?」
警察官はなぜタメ口で話すのだろう。
昔から父を見てきたし、駐在所に住んでいたこともあるから市民と警察官が話しているのをたまに聞いていたが、父も含めなぜか警察官は市民にタメ口で話す。
わたし「8:30に玄関前のチャイムが鳴り、無視すると二回目のチャイムが鳴り、さらに無視するとドアをノックする音が聞こえました。怖いので無視して覗き穴を覗こうと恐る恐る玄関へ近づくとガンッと扉が空いて向こうに隣人の姿が見えました。」
警察官「玄関前のチャイムってわかったのはなんで?あとなぜ隣人ってわかったの?」
わたし「下でインターホンを鳴らされると顔が写ります。隣人の顔を把握していたのは、もうここに3年住んでて、隣人とも何度かエレベーターなどでお会いしてます。その時は気さくに挨拶してました。」
警察官「そうなんだ。失礼だけど現在お付き合いしてる人は?」
わたし「います。」
警察官「鍵を渡したりしてない?」
わたし「渡してないです。」
警察官「元カレとかは鍵渡してたりしなかった?」
隣人だと言ってるじゃないか。
元カレはわたしのタイプ上身長は全員185cmあるので間違えるわけは無い。
扉の向こうにいた人物はは推定175cmだった。
わたし「渡してましたが返してもらっています。別れ方も円満でもう一年以上前なのでいたずらしたりはしないと思います。」
この恋愛遍歴は親にも話していないのになぜ会って2分の人に話しているのだろう。
疑問に思いながらも仕方ないか、と正直に話していた。
警察官「そうかぁ。じゃあ名前と住所、連絡先教えて。」
わたし「名前は〜といいます。住所は〜、連絡先は090...。あと、管理会社に連絡したらエレベーターの監視カメラの情報提供してくれるみたいです。」
住所は聞いてるからここへ来れたんじゃないのか?
普段営業をしていてお客様負担はなるべく減らす方向で対応しているから疑問に思ったがそんな細かいことは今はどうでもよい。
警察官「本当に、それはよかった。」
警察官「それでさ、玄関に鍵が刺さったままなんだけどこれはいつも?」
へ?鍵が刺さったまま?
なんのことだ?
玄関を出て見てみると鍵が確かに刺さっている。
そしてわたしは走馬灯のように思い出した!!
昨晩お酒やハーゲンダッツ、おつまみと翌朝のバナナを買い込んで荷物いっぱいで帰宅したことを。
両手がふさがっているからひとまず鍵をさしたまま中へ入り、荷物を置いてそのあと鍵を抜こうと思ったことを!!
急に恥ずかしくなった。
きっと隣人は鍵さしっぱなしですよ、と教えてくれようとしてピンポンしてくれたんだ。
二回も。
わたし「わーーすみません><昨日荷物いっぱいで帰宅して荷物置いてから鍵抜こうと思ってそのままだったこと思い出しました!本当すいません。きっと鍵ささってるって教えてくれようとしたんですね」
警察官(苦笑)
警察官「よかったねー。」
ここでなぜか2名追加で警察官が現れた。
ちょうど解決したところで2名増員され、
わたしのおっちょこちょいな事件に3名も日曜の朝っぱらから要員してしまい申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
推定22歳の警察官が新しく来た2名の警察官に事情を話し、2人がもう平気か、とおそらく指紋を気にして抜かなかった鍵を抜いて渡してくれた。
というか22歳の警察官!
もっと早く来た瞬間に鍵ささってること教えてくれてもよくないか?
落ちはこんな感じで
父と母に電話しお騒がせして申し訳なかったことを伝えた。
母は直後に電話した時半泣きで「家から出ちゃダメだよ、相手は鍵を持ってるんだからリチャードが家に帰ったら待ち伏せしている可能性あるからね、今日のお昼のパンケーキの約束はキャンセルしなさい!」と心配していたので特に謝っておいた。
お昼パンケーキへ行く約束だった友達にもリスケのメールを送っていたので丁重に謝った。
最悪間に合ったが、なんだかバタバタしていたので結局リスケしてもらった。
ふぅ。
AM10:00
一息ついてわたしは眠りについた。
パンケーキキャンセルは眠かったからに他ならない。
PM15:00
起床する。
冷静に物事を考える。
隣人いい人じゃんー♡
今度挨拶しておこう。
と思っていたが、
隣人はドアを開ける必要はあったのだろうか。
もしあの鍵がわたしが出かける際抜くのを忘れてしまっていたとしたら、、、
・・・勝手に入って何するつもりだったの?